中村 俊介
鮨「中村」三代目
夜明け前の築地。市場にはすでに活気があふれ、仲買人たちの掛け声が響いていました。三代続く鮨店「中村」の主人、中村俊介さんの一日は、ここから始まります。
「良い寿司は、良い目利きから」と中村さんは言います。その日水揚げされたばかりのマグロや、旬の魚介を一つひとつ手に取り、鮮度と脂の乗りを確かめていく様子は、職人としての矜持そのものでした。
早朝の築地場外市場。新鮮な魚介が並ぶ。
一本一本に込められた手仕事
店に戻ると、仕込みが始まります。酢飯の温度、シャリの硬さ、ネタの切り方。すべてが数値化されることのない、長年の経験による感覚で調整されていきます。カウンターに座ったゲストの前で、握りが一つひとつ丁寧に差し出される様子は、まさに江戸前寿司の真髄でした。
合間には、炉端で焼かれる肴も登場します。炭火の香りが漂う中、脂の乗った鯖がじっくりと焼き上げられ、寿司の間の一品として供されました。
炉端で炭火焼きにされる、脂の乗った鯖。
市場の喧騒の後に
体験の終わりには、近くの屋台で豚骨ラーメンと、彩り豊かな弁当をいただきながら、東京の食の多様性についても語り合いました。江戸前寿司の静かな緊張感と、市場の屋台の賑やかさ。この両極こそが、東京の食文化の魅力だと感じました。
市場近くでいただいた、豚骨ラーメンと弁当。
静かな職人技と、賑やかな市場の食。その両方を一日で味わえるのが、東京という都市の豊かさだと改めて感じた一日でした。