川村 隆
京料理「川村」主人
祇園から少し離れた静かな路地に、三代続く料亭「川村」はあります。引き戸を開けると、炭と出汁の香りがふわりと漂い、季節を感じさせる掛け軸が迎えてくれました。
主人の川村隆さんは、毎朝市場に足を運び、その日に出会った食材から献立を決めるといいます。「メニューは私が決めるのではなく、畑や海が決めてくれる」。そんな言葉に、京料理の本質が詰まっていました。
料亭へ向かう、祇園の夕暮れの路地。
冬の京野菜と海の幸
この日の懐石は12品。聖護院大根の炊き合わせ、賀茂茄子の田楽、若狭の寒鰤と、京都近郊と若狭湾の恵みが交互に現れる構成でした。ひとつひとつの器も、季節の意匠がほどこされた京焼が選ばれています。
特に印象的だったのは、八寸と呼ばれる前菜の盛り合わせ。小さな器の中に、数種の味、食感、色が緻密に配置され、まるで庭園の縮図を見ているようでした。
料亭の裏手にある、小さな庭の紅葉。
食後の、静かな一服
コースの最後には、茶室にて点てられた抹茶がふるまわれました。主人自ら茶を点てる所作は、料理と同じく無駄がなく、それでいて温かさがありました。静寂の中で味わう一杯は、旅の締めくくりにふさわしい時間でした。
茶室で点てられる、季節の抹茶。
派手さはありません。しかし、一品一品に込められた時間と配慮の深さに、京都という土地の美意識を感じる、静かで豊かな体験でした。